night flight day3
"sometimes you will never know the value of a moment, until it becomes a memory."
Dr.Suess
思い出になってはじめて、その瞬間の価値に気づく。
大変シンプルな英文ですが、日本語に訳すのが難しい。英文のままニュアンスを感じたい、ちょっと切なくなるドクター・スースの名言です。
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近年の映画で、大好きな作品のひとつに、ベン・スティラー監督、主演の「the secret life of Walter Mitty 」があります。
ショーン・ペンが、世界中を飛びまわる著名な冒険写真家ショーン・オコンネルを演じていて、これがものすごくかっこいいんですよね。
ベン・スティラー演じる主人公のウォルターは、とある事情から、オコンネルを探す旅に出ることになるのですが、ヒマラヤの山頂でようやく「仕事中」の彼を発見します。
オコンネルは、めったにその姿を現さないというユキヒョウをカメラにおさめるため、じっと待っているのですが、ようやく姿を現したユキヒョウを前に、彼はシャッターを切らず、ファインダーから顔をあげてしまいます。
なぜ写真を撮らないのかというウォルターの問いに、彼は静かにこう答えます。
“Sometimes I don’t.If I like a moment,for me,personally, I don't like to have the distraction of camera. I just want to stay in it. ”
時々、もしそれが本当に自分の好きな瞬間なら、カメラに邪魔されたくない。ただそれをゆっくり味わいたいんだ。
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写真を撮っていると、その二度と訪れないかもしれない一瞬一瞬を逃したくなくて、ただひたすらシャッターを切り、その色を、形を、懸命に、フィルムに、データに残そうと躍起になるけれど、その後、心には何が残っているでしょうか。
ただ夢中でシャッターを切ったこと?
写真は、50年先、100年先まで、その瞬間を残すことができるけれど、果たして、本当に、人の記憶の中にあるそれに優るのか…。
写真の中で笑う亡き父は、どれだけ長い年月が過ぎても、はっきりとそこにいるけれど、時とともに輪郭がおぼろげになってゆく記憶の中の父には、どうしたってかなわないのはなぜだろう。
カメラを始めて得られたものは、たしかに数えきれないほどあります。
だけど、もしかしたら、ファインダー越しに「見逃して」きた、真に素晴らしい瞬間もまた、多いのかもしれません。
※"The secret life of Walter Mitty"の劇中の写真はインターネットからお借りしました